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鎮(しずめ)神社は、経津主命(ふつぬしのみこと)を祀り、中山道奈良井宿はずれにある宿の鎮守である。「神社由緒書」によれば、寿永から文治(十二世紀後期)のころ中原兼造が鳥居峠に建立したと伝えている。疫病流行を鎮めるため下総国香取神社を勧請したことから鎮(しずめ)神社と呼ばれるようになったという。 たまたま奈良井宿を訪れた日が鎮神社の祭礼の日にあたっていたこともあって、宿内は活気に満ち家々の軒先には鎮神社の神紋「丸に立ち沢瀉」を描いた提灯が下がっていた 。神社に行くと、祭りの主役の若者が「丸に立ち沢瀉」を捺した袴姿で控え、地車がいままさに神社から宿内に曵かれて行こうとする所であった。地車を飾る真紅の緞子にも「丸に立ち沢瀉」が据えられていた。 【上段】●鳥居/●地車/●法被の「丸に立ち沢瀉」紋 【下段】●地車巡行を待つ男たち/●神馬/●宿内の神灯 |
鎮神社が鎮座する奈良井宿は中山道十一宿のうち北から二番目に位置する宿で、古い宿場町の面影を残して国の伝統的建造物群保存地区に選定されている。奈良井川にへぱりつくような形で、200軒余の切妻平入りの民家が軒を並べている。宿のはずれには、中山道の旧い道が往時のままに残り、まことに江戸時代の風情に浸れるところである。 祭礼の喧噪のなか宿内をぶらぶら歩くと、家々の軒先に吊るされた暖簾に「剣酢漿草」「松笠菱」「下り藤」など、それぞれの家の紋が記され、現代に家紋が生きていることを実感させてくれる。 【上段】●宿内の家紋あれこれ(左から=松笠に梶・丸に剣酢漿草・桐・丸に鷹羽違い) 【下段】●上問屋資料館/中山道の旧道の杉並木/奈良井宿の風景 |