八百里山は篠山市街の北東にある畑地区のほぼ中央にあたる瀬利にあり、その北方には多紀連山の主峰である御嶽が
聳え立っている。むかし、神奈備山として崇敬された山だけに、その姿は御椀を伏せたような優美な形をしている。
八百里山の中腹にある平場は斎場であったといい、巨石を石室状に組んだ磐座跡(おそらく古墳跡であろう)が残って
いる。磐座の後方には稲荷社が祀られているがいささか荒廃が進んでおり、
かつての神奈備山への尊敬の思いも次第に風化の一途をたどっているようだ。
八百里山の南山麓には法道仙人が開いたという願成就寺跡があり、神仏混交時代には畑地区の氏神佐々婆神社の別当寺であったというが、いまはかつての住職の墓石が残るばかりとなっている。また、稲荷神社の赤鳥居と並ぶように佇むお堂には、「お聖天さま」と呼ばれる瀬利歓喜天が祀られている。そして、山上にはかつて畑地区を支配した畑一族が築いた山城址が残っている。八百里山一帯は、古代から中世、そして現代に至るまでの様々な歴史模様を感じさせるところである。
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