稲妻(雷)紋
雷光は稲を稔らせる神の仕業と考えられた、
公家の山科氏の専用紋といえるものだ。
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稲妻は空中電気が放電するときに閃く火花のことで雷電とも書かれ、光るからイナビカリともいう。いわゆる
「ゴロゴロ、ピカ!」の「ピカ!」で、雷のことである。
「稲妻」といわれるのは、八月中旬以後の雷光
を稲を稔らせる神の仕業と考え「稲に通う妻(夫=ツマ)」とした古俗に根ざしたものらしい。すなわち、古代の人々は雷神が稲を孕ませ、稔りを与えてくれると考えた。一方、神の字のつくり「申」の字は雷を造形化したものといわれ、すでに神を雷の化身とする民俗は古代中国に存在していたようだ。いずれにしろ、稲妻=雷光への信仰は天空の不思議に対する畏敬の念からきたもので、雷光が雨を呼ぶことから、稲作農業とも結びついたのではなかろうか。
それが、文様となり、やがて家紋にも採用されるようになった。
雷光である稲妻の紋様は、直線がつぎつぎと曲折していく幾何学的模様で、古くから陶器、漆器、金工、木彫、建築などに用いられている。稲妻紋は雷紋ともいい、その形から渦巻き紋に間違われることも多いが、まったく別のものである。意匠としては、組み合わせたり、重ねたり、電光をなかにはさんだりして、一種不可思議な紋となっている。それもあって、
稲妻紋は呪符のように扱われ、ふつうの家ではあまり使用しないようだ。
公家では藤原北家四条家流の山科家の専用紋として知られる。山科家は中御門中納言家成の子権中納言実教を祖とし、戦国時代に出た山科言継はとくに有名だ。武家では備中岡山藩主の伊東氏、ほかには中島、御手洗、伊勢、竹田の諸氏が用いているが、多くは神社関係のものだ。藤原南家河津流の伊東家は「隅立て稲妻」。これは、祖七蔵長久は豊臣秀吉に属し、ある合戦のとき、めざましい功績をあげながらおしくも戦死してしまった。
それを知った信長が、この紋を授けたのだという。
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・写真:
FREE music & animation WAREHOUSE さん
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どこの家にも必ずある家紋。家紋にはいったい、
どのような意味が隠されているのでしょうか。
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