梶 紋
信濃にある諏訪大社の神紋として有名。
そして、神家党とも呼ばれる諏訪一族の代表紋である。
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梶の木は桑科で、わが国の山野などに生えるありふれた植物で和紙の原料としても栽培された。古代には神を祭る幣帛として梶の皮が用いられ、葉は柏などと同様に御食を献じる器に代用された。また、平安時代の七夕祭には、現代のような竹や笹に飾りを付けるのではなく、梶の葉に詩歌を書いて星を祭った。このように古代より、梶は神聖な木とされて神社の境内に植えられることが多かった。やがて衣服の文様などに用いられるようになり、古くは『伴大納言絵巻』に見えている。それが、神事との関係から神社の紋となり、神官はもとよりその神社に奉仕する家々が家紋として使用するようになった。
神社の紋としては、信州の一宮である諏訪大社の「梶の葉紋」が有名である。『諏訪大明神絵詞』によれば、
神功皇后が新羅征伐のとき、諏訪・住吉の二神が、梶葉松枝の旗を掲げて先陣に進んだとあり、また、安倍高丸が謀叛
したとき、坂上田村麿が伊那郡と諏訪郡との境、大田切という所で梶葉の藍摺りの水干を着て、鷹羽の矢を負い、
葦毛の馬に乗った諏訪大明神に行き遭ったことが記されてある。しかし、絵詞は室町時代はじめの作であり、
坂上田村麿の時代に神紋があったとは思われないが、梶葉紋が諏訪大社の神紋として周知のことであったことが分かる。
諏訪大社は、建御名方富命と八坂刀売命を祀り、下社と上社とに分かれている。そして上社は建御名方富命を、
下社は八坂刀売命を主祭神として祀っている。ともに梶の葉を神紋として用いるが、下社のは足が五本で、
上社は四本となっている。諏訪大社では神紋を「根梶」あるいは「根あり梶」と称して、三本梶に太い根が大地に
食い込んでいる独特な図柄のものである。
梶の葉が紋として記録に現れるのは『吾妻鏡』の治承四年(1180)九月の条で、甲斐源氏武田太郎信義・一条次郎忠頼らが、源頼朝の挙兵に応じて出陣したとき、諏訪上社の大祝篤光の妻が夫の使いとして、一条次郎の陣所に来て、「主人篤光、源家の再興を祈って三ヶ日社頭に参籠したところが、ある夜、夢枕に梶葉紋をつけて葦毛の馬に乗った勇士が、源氏の方人と称して、西を指して鞭を揚げたのは、これひとえに諏訪大明神の示現である」と告げたことである。諏訪神社の神官は、建御名方命の後裔で諏訪国造の流れを汲む諏訪上社が諏訪氏、下社が金刺氏であった。
平安時代中期以降、神家の嫡男が諏訪社の大祝を継ぐのが例となった。その頃より一族が繁栄して信濃国内に多くの
庶家を分出して大祝家を宗家とする武士団を形成、東国屈指の勢力を誇り世に「神家党」「神氏」といわれた。手塚・
有賀・保科・上原・知久・藤沢などの家々で、これら庶子家はこぞって「梶の葉」を家紋した。また、鎌倉時代に
信濃国塩田荘の地頭となった島津忠久は諏訪神をあがめ、のちに薩摩に移ったとき諏訪明神を勧請したことから、
薩摩にも梶の葉紋が広まった。室町時代に成立した『見聞諸家紋』をみると、丹比氏の「梶の葉」、
神家物部氏の「丸に梶の葉に一つ引両」、太田上野介光の「実付き梶の葉」、
瓦林氏の「抱き梶の葉」「丸に対い割り梶の葉」などの「梶の葉紋」が記されている。
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家紋:諏訪下社の梶の葉紋
■ 見聞諸家紋にみえる梶紋
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左から:丸に梶の葉に一つ引・抱き梶の葉・丸に対い割り梶の葉・実付き梶の葉
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ところで、肥前の中世豪族で戦国時代を生き抜き近世大名としても続いた松浦氏が梶の葉紋を用いた。松浦氏は嵯峨
天皇の皇子らに始まる嵯峨源氏の流れで、源頼光四天王の一人として武名の高い渡辺綱の後裔を称している。嵯峨源氏の
代表紋は「三つ星に一文字」で、俗にいわれる「渡辺星」である。松浦氏が「梶の葉」を家紋としたのは、松浦氏の祖が
肥前国松浦郡梶谷に住して居を構え、諏訪神社を勧請して祭祀したことから、「梶の葉紋」を用いるようになったと
伝える。一説には在所である梶谷にちなんで、「梶」を家の紋としても散るようになったともいう。松浦氏のものは、
とくに「平戸梶」と呼ばれている。余談ながら、嵯峨源氏の伝統紋「三つ星」も併せ使用していることは言うまでもない。
いまも、家紋に梶の葉を使用して信州との縁がある家の場合、諏訪神党の流れを汲む可能性が高い。また、各地に
分祀された諏訪社の神官あるいは氏子などであったとも思われる。とはいえ、梶川・梶本など「梶」の字の付く家が
その名字にちなんで「梶の葉」を家紋としている例も多い。家紋から出自を特定することは危険だが、家紋は先祖の
名残をどこかに伝えているものである。20100207
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どのような意味が隠されているのでしょうか。
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