墓と家紋
今日、ほとんどの墓石には家紋が刻まれている。これは、北は北海道から南は鹿児島まで。まんべんなく
家紋がついている。しかし、墓石に家紋を刻む風習は、じつはそれほど古いものではない。
江戸時代初期の慶長・元和年間(1596〜1624)の墓石にはほとんど家紋はなく、時代が下ってくるに従って徐々に
増えてきている。それでも幕末の安政年間(1854〜59)ころは30パーセントくらいであったろうと推定されている。
そして、明治以降になって、急速に増えていき、現在のような状況に至っているのである。
墓は先祖の居所だから神聖な場所だ。したがって家のシンボルである家紋をつけるのは自然な感情の発露であろう。
ところが、いざ墓に家紋というときに「家紋が分からない」という場合もあるようだ。それには、まず位牌、家具、古文書、お寺の過去帳などからルーツを探る。また同姓の親戚がいれば、その家と同紋の場合が多い。
では親戚もなく、ルーツを探るものが一切ない、いわゆる天涯孤独の場合はどうするか。
1)妻方の紋を使う。
2)同姓の家の紋を借用する。
3)新しい自分の紋を創設する。
ただし、一旦きめたらそれを自家のシンボルとして大切にする気持ちが必要だ。好みのままに、墓石、礼服の紋付、
調度品の紋などがバラバラだということにならない心得は最低限必要だ。
【図:墓に刻む紋の位置の一例】
………
[資料:家紋-知れば知るほど(丹羽基二氏著)]
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